昨年から今年にかけて、
「咳が止まらない」と訴える
3名の患者さんを施術させて頂きました。
そこでDRTによる咳(咳嗽:がいそう)の
症状改善について報告致します。
【咳のメカニズム】
まず咳とは、肺や気管などの
呼吸器を守るために、
外から入ってきたほこり、
煙、風邪のウイルスなどの
異物を気管から取り除こうとする
生体防御反応です。
具体的には異物が入り込むと、
まず咽頭や気管、気管支など
気道の粘膜表面にある
センサー(咳受容体)が感じ取ります。
その刺激が脳にある咳中枢に伝わると、
横隔膜や肋間膜などの
呼吸筋(呼吸をおこなう筋肉)に
指令が送られ咳が起こります。
この反射運動を「咳反射」といいます。
つまり咳が止まらないという症状は、
『カラダの全自動の異物排泄システムが、
スイッチ入り易くなり過ぎて
もうどうにも止まらない状態になっている』
という事です。
言うなれば生体防御反応の暴走ですね。
では、これらのメカニズムを踏まえた上で
咳症状の症例を報告させて頂きます。
【症例1:A・Kさん(女性) 年齢31】
1回目:5月20日
10日前から風邪で病院を受診。
発熱症状は消退したが
4~5日前より咳で夜眠れない。
2回目:5月27日
前回のDRT施術を受けた夜から
咳が格段に減って夜もよく眠れた。
この7日間で咳は4分の1くらいに減少。
3回目:5月31日
咳はほぼ出なくなった。
4回目:6月10日
状態良好のため治療終了
まとめ:
1回目の施術時は
三大指標の全てに圧痛があり、
スプリングテストで
D7とD3に強い圧痛がありました。
初回の施術の夜から咳が減り、
症状が一気に回復したとのことです。
施術当日から変化が現れたところを見ると
気管粘膜の神経過敏が
DRTによって沈静化し
改善に向ったと推測されます。
2~4回目に関しては
三大指標、スプリングテストの改善と
咳の症状の改善が一致していたので
「あと10日ほどで良くなると思いますよ」
とお伝えできました。
【症例2:T・Hさん(女性) 年齢49】
1回目:6月21日
2ヶ月前より風邪症状があり病院を受診。
投薬で様子を見ているが
この1ヶ月は咳がひどく、
一向に回復する様子がなく当院を受診
2回目:6月26日
前回のDRT施術後、
当日から咳の回数は2割くらいに減少との事。
病院でも「原因がわからない」
と言われていただけに大変喜んでいた。
3回目:6月30日
喉の違和感はあるので咳払いはするが、
DRT施術で不随意的な
咳はほとんど出なくなる。
4~5回目:7月4日~11日
4回目の問診の段階で
咳の症状は無くなったとの事だったが、
スプリングテストで
D3の圧痛、第2頚椎の
圧痛が残っていたため継続施術を行う。
5回目の術前で指標は
全てクリアになっていたので
1ヶ月ごとのレギュラーチェックに移行。
まとめ:
最初は1ヶ月近く続いていた咳なので、
気管粘膜が傷ついて炎症を起こしている事が
原因と診断しました。
気管粘膜の修復期間を考えると
改善兆候が出るまでに
3週間くらいを見込んでいたのですが、
初回のDRT施術で改善。
この事から気管粘膜の損傷というより、
粘膜の受容器の神経過敏によって
症状が出ていたという推測が成り立ちます。
つまりDRTは
自律神経系への作用も大きいのだと、
施術している自分自身が
非常に勉強になった症例でした。
【症例3:H・Aさん(女性) 年齢75】
1回目:1月10日
2週間ほど前から風邪症状あり。
病院にて投薬を継続するも
発熱は治まったが、
咳と右奥歯の痛みが
悪化傾向にあったために当院に来院。
2回目:1月16日
1回目の施術後に咳の回数は激減し
10%残るくらいに改善。
右奥歯の痛みも改善していたが、
念のため歯科の受診をお勧めする。
3回目:1月20日
咳は消失。
右奥歯は歯科を受診後に痛みが改善。
以後レギュラーチェックに移行。
まとめ:
この症例も1回目の施術の夜から
咳の回数が急激に減りました。
三大指標は全てに圧痛、スプリングテストでは
D12、D3に強い圧痛が検出されました。
奥歯の痛みは顎関節の指標が出ていたので、
咳のしすぎで顎関節周囲の
筋肉の過使用の問題もあったかもしれません。
DRTのみで改善できると考えましたが、
念の為に歯科の受診を勧めた事は
患者さんとの信頼構築にも役立ちました。
【DRTによる咳改善の考察】
これら3つの症例の共通点は、
・風邪などの呼吸器感染症が
起点となっている事
・発症から8週間以内で
慢性咳嗽に移行していない
・スプリングテストでD3の圧痛が強い
という事です。
咳には原因によって様々な分類があり、
重篤な疾患のサインで
ある事もありますので、
『DRTが全ての咳に効果がある』
と結論づけるのは早計であると思われます。
あくまで、
「DRTによって生体の防御反応が正常になり、
付随的な効果として咳の改善があった」
にとどめるのが良いかと思います。
ただ、気管粘膜の
『炎症』や『神経過敏』による
咳がDRTによって改善されたという事で、
『DRTが「神経系・内分泌系」にも作用した』
と推測でき、
DRTが持つ医療の適応範囲への
可能性を感じました。
DRTがアプローチできるのが
筋肉系、骨格系だけでなく、
神経系・内分泌系という
身体の調節機能に及ぶのだとしたら、
適応範囲は拡がります。
当然、医者ではないですから
医師法違反に抵触するような
行為や表現は禁物です。
しかし一人ひとりの患者さんの
症例で考察と仮説を重ねていけば、
DRTには無限の可能性がある
のだと改めて思いました。
常に考える姿勢を崩さず、
日々の臨床活動をこれからも
頑張っていきたいと思います。
田中 雅浩